ポー: こがねむし 購読用テキスト 注釈 藤本正文 (郁文堂、1993)


本編の have 3 (動) に類似している事例が掲記の作品の中にあります。意味は 「被害」 have 4 です。この語法でのこの語順の転倒は今日そう度々は出てきませんが、このポーの短編は一応文学の古典の中に数えられていますので、ご参考までに。

At the sight of these the joy of Jupiter could scarcely be restrained, but the countenance of his master wore an air of extreme disappointment. He urged us, however, to continue our exertions, and the words were hardly uttered when I stumbled and fell forward, having caught the toe of my boot in a large ring of iron that lay half buried in the loose earth. --E. A. Poe, "The Gold Bug" (上掲書 24 頁, 注釈 69 頁)

ところで以下は雑談になりますが、かって丸谷才一さんの 「年の残り」 (文春文庫、1975) には一人の怜悧な高校生 (都立) が登場し、彼は英語の勉強にポーを読んでいる、と日記に書いていました。「難単語に苦しむ」 とあるのでリライト版ではないのでしょう。そして当時はこれで、格別不自然とは感じられなかったものです。しかるに今日、わが国の平均的な高校生、大学生諸君はこういった正統派の文語文体を読むのが苦手です。おそろしく苦手、と言えるかもしれません。生活優先主義。かつ大雑把奨励主義の教科方針のもとで仕方がないのかもしれませんが、やはり練習をしていないことが上手になる筈はありません。一つの文化現象として残念なことではないのでしょうか。

またそれはとにかくとして、実は 「こがねむし」 はポーの作品の中でもっとも読みやすいものの一つです。ストーリーも語学?的です。高校、大学などのクラスでのご指導に当テキストをご使用いただければ幸いです。

国立国会図書館  紀伊国屋書店 


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